今後の感想予定

2004年2月16日
コミック
アカギ(福本伸行)KC
20世紀少年(浦沢直樹)KC

小説
スパイラル〜推理の絆〜ソードマスターの犯罪(城平京)
スパイラル〜推理の絆〜鋼鉄番長の密室(城平京)
まぼろし曲馬団の逆襲(太田忠司)
カーニバル 二輪の草(清涼院流水)
Pの密室(島田荘司)
インストール(綿矢りさ)
水没ピアノ(佐藤友哉)
十角館の殺人(綾辻行人)
四季(森博嗣)

カウンタ1000

2002年12月29日

第五回角川学園小説大賞、特別賞受賞作。

戦う女子高生、雪崎絵里。謎の怪物、切っても刺しても死なない不死身の怪物、チェーンソー男。二人の対決に偶然行き合わせ、悪と戦ってかっこよく死ねるのなら、俺の人生はオールオッケーだ、と考える山本陽介。それに陽介の友人が何人か出てくるだけで、本書の登場人物は少ない。

美少女戦士が諸悪の根源を倒すために戦っている。けれど実際は、もっと小さくて個人的な話のようである。女子高生とチェーンソー男は毎晩戦っている。陽介が協力しているのは、絵里をチェーンソー男が現れる場所まで、自転車に乗せて移動するということくらいで、戦う絵里を眺めているのがほとんどである。

はっきりいえば、主人公だろうと思われる陽介はほとんど役に立っていない。絵里に対しても、下心丸出しの言葉をかけていたりする。(実際にそんな言葉かけたら、もう気軽には話してくれないだろうとは思うのだけど)

それでもやはり、女の子を最後に助けるのは、男の子の役目である。最後になってようやく、陽介は主人公らしい行動をする。少年少女の物語の定番に一直線である。(戦う女子高生を設定とした物語は幾つかあると思うけど、この作品に一番近いのは、パソコンゲームのKanonの川澄舞シナリオの影響を色濃く受けたのだろうな、と思うのだけど。違うかな)
女性作家が催した、読唇術師を招いての夕食会。招待客が心の中で考えていることを見事に当てた読唇術師は、女性作家の夫の死を予言し、その日時までが現実となる。死因は解剖しても不明であった。そして、読唇術師はテレフォース(念力)で人を殺すことが出来ると豪語し、第二の殺人が発生し……。

この物語が書かれたのは1939年であるが、古さを全く感じさせない。テレフォースによって行われた殺人というのは、今の時代でもなお魅力的な謎である。(というか、テレビドラマの『トリック』でも、予言通りに人が死んでしまうという話があったような)
第一部[メルヘン小人地獄]、第二部[毒杯パズル]の二部構成ミステリ。第八回鮎川哲也賞最終候補作。

問題は、誰が、何のために、ポットに毒を入れたか、である。という一文が第二部の冒頭にある。結論からいえば、本作の中心はこれである。犯人でも、トリックでもない。何のために毒を入れたか、である。

第一部、第二部とも、遺体を解剖しても毒の痕跡が全く発見されない、「小人地獄」と呼ばれる完全犯罪に理想的な毒薬が扱われる。

孤高の探偵、瀬川みゆきを始め、第一部、第二部とも、登場人物はほぼ同じである。中編を二編収めたような感じを受けるが、間違いなく二編で一本となる長編推理小説である。

不可解な事件を颯爽と自身満々に解決する名探偵。そのような探偵が小説では多数を占める。けれど、瀬川みゆきは、名探偵を辞めることが出来ず、続けなければならない。本作は、哀しい探偵小説である。(この話はちょっと悲しすぎるなあ。哀しすぎるよぉ)
月刊少年ガンガンにて連載中、『スパイラル 〜推理の絆〜』の原作者自らの解説本。

当初は推理漫画として始まったが、今や小説やドラマCD、アニメなど、多種に渡り展開されている。(って、コミック自体の感想を書いておかないとまずいわな)
三毛猫ホームズの名探偵ぶりが冴える6編を収録した傑作シリーズ第35弾。

推理小説というよりも、人間の心理をうまく書いた人間ドラマである。推理小説集ではなく、推理傑作集と書かれているのは妥当だろう。(少なくとも、本格って作品ではないし)
作中で語られている通り、『樽』(F・W・クロフツ)を念頭に書かれたのは確かだろう。登場人物が、クロフツの作品を凌ぐ事件です、と言うのは鮎川先生の自負か。

1949年、汐留駅前交番の電話のベルが鳴り、事件の幕が切って落とされた。トランクに詰められた男の腐乱死体。荷物の送り主は福岡県若松市近松千鶴夫。捜査陣の見込みに反し、送り主は実在し、その近松は死体となって発見され、事件はあっけなく解決したかに思われた。かつて思いを寄せた人からの依頼で九州へ駆けつけた鬼貫の前に青ずくめの男が出没し、アリバイの鉄の壁が立ちふさがる……。(創元推理文庫あらすじ要約)

風見鶏が北を向くのはどんなときか? この設問に答えられる読者はどれだけいるのだろうか。(本格ミステリ、と評されることが多いみたいだけど、トラベルミステリーともとれるかな)
ロンドン波止場に到着した汽船の積荷の樽の中から、金貨と死人の手が発見される。ところが、捜査陣の到着前に、樽は姿を消してしまう。ドーヴァー海峡を挟み、ロンドン警視庁、パリ警視庁の刑事による活動が始まる……。

クロフツの処女作であり、アリバイものの原点である作品とのことである。ロンドン警視庁、パリ警視庁の刑事は、凡人型の刑事で、足を使って丹念に事件を調査していく。そして捜査に行き詰まったところへ、英仏混血の探偵が現れて謎を解く。

犯人自体を当てる小説ではなく、鉄壁のアリバイをどのように崩すかが、本作の主題である。推理小説は解答を知るとあっけないほど簡単なものが多いのだが、本作も単純すぎて気づかずに通り過ぎてしまうようなトリックである。

結末は劇的なものに仕上げてあるのだが、解答編が短すぎるような気もする。(あと気になったのが、一つだけどはいえ、探偵が自分の解らないところを犯人に聞くところ。犯人が解っているのに、謎が全て解けてないじゃないかあ)
短編小説集。9作収録。

現実にはありえないことを書いた小説ばかりである。設定自体が特殊であり、話のめり込んできたところで物語が終わるパターンが多い。(短編集だから仕方ないか)

椎名さん特有の造語には、脱帽。物語の世界観では、それらは存在するのである。
折原一のデビュー作、『五つの棺』増補改訂版。七つの短編全てで扱われているのが、密室状況での事件である。

事件を解決(しようと)する黒星光は、推理小説好きが災いし、密室の魅力に取り付かれ、人生を踏み外しかけている迷警部である。

そんな彼が活躍するせいか、殺人事件をそれほど陰惨と感じさせない。ユーモア的要素を含んだ、推理小説集である。(文章も読みやすいし、難しくはないね)
題名から、トラベルミステリーと思われるものの、それだけでは終わらない。確かに、時刻表を使ってのアリバイ崩しを刑事が捜査していく、内容なのだが、本格推理小説的要素が含まれている。即ち。

豪華マンションの浴室で発見された、若い女の「顔の皮を剥がされた死体」。ところが、被害者は死亡推定時刻に、寝台特急「はやぶさ」に乗っているの目撃され、写真まで撮られている。ブルートレインに乗っていたのは、彼女の幽霊なのか。そして、第二、第三の殺人が発生し……。

本書はトラベルミステリーの体裁を使用した、本格推理小説である。(と書くと、トラベルミステリーのファンから、お叱りを受けそうだけど。単に、僕が本格好きだというだけである)
警視庁捜査一課、片山義太郎、妹の晴美、石津刑事。そして、三毛猫のホームズが活躍するシリーズシリーズ第34作。

これだけシリーズを重ねていると、主要人物の説明がほとんどなくなっている。(まあ、読者の大半が第1作から読んできているのだろうけど)

『三毛猫ホームズの推理』(シリーズ第1作)にあった、本格推理小説的要素は薄れてきている。ホームズの活躍も、初期のころほどはない。

犬の系譜(椎名誠)

2002年12月17日
題名からすると、犬の話が延々と出てくるのかと思ったが、犬だらけの話ではない。椎名さんの家に犬がいた時代の家族や、周辺の人々の話が書かれている。

大抵は、仲間との出来事を書くことの多い椎名さんだが、今作では家族のことがかなり描かれている。そして語りが丁寧である。(犬が中心にあることはあるのだけど、家族の話の方がやや多いかなという感じ)
本書を藤子・F・不二雄先生に捧げる、という言葉通り、藤子作品を意識して書かれているのは確かだろう。

小学校6年生の男の子が、学校からの帰りに見つけた謎の博物館。そこで出会った少女は、ここは、ミュージアムを展示するミュージアムだと告げる。

少年は博物館に通い始めるようになる。やがて博物館が、歴史の中で失われた美術品や遺物、過去の博物館や遺跡を人工現実の技術で再現していること、極限までにリアルに空間を再現すると、その時代のその場所と<同調>し、タイムスリップしてしまうということを知る。

そして博物館に異変が発生し、1866年のエジプトに少年と少女は向かうことになり、冒険物語が始まる。

物語は藤子不二雄を彷彿させるが、それだけでは終わらない。文字、文章という媒体を使用した物語という枠組みを外した仕掛けが施されている。

冒険終了後の展開、少女の言葉は、藤子作品と同じく感動を与える。(というか、お約束だろうが、なんだろうが、僕自身、本を読んで泣きそうになったのは、本当に久し振りだった。やっぱり、少年少女の物語は良いなあ)

「ぼくだったら、絶対にこの小説はハッピーエンドにする。だから、きっと、どうにかなる」
本格推理小説と銘打つものの、太田さんの小説は、他の推理作家の小説と多少異なる。推理小説は、人が殺されて、探偵が謎を解くのが一般的なパターンで、重視されるのは、人の死ではなく、不可解な謎である。けれど太田さんは、たとえ小説の中でも、人の命を軽く扱うべきではないと考えている。

本作の主人公、霞田志郎は、事件をただの推理の対象として客観的に扱うことをせず、真正面から受け止めてしまう。結果として、事件の背後にある人間の悪意や憎悪、狂気に身も心もさらしてしまい、彼自身の神経を著しく疲弊させてしまう。

そのような探偵、霞田志郎が活躍するシリーズの第2期作品である。

「わからないよ。人間の心の奥底なんて、他人はもちろん自分にもわからないと思う」
島田荘司氏推薦の『ドッペルゲンガー宮』でデビューした、霧舎巧の本格推理小説。《あかずの扉》研究会シリーズ第4作。

館もの、孤島もの、嵐の山荘もの、と続けてきて、今作の趣向は、Whodunit(犯人当て)である。

ノベルスの体裁を利用したある種のトリックが使用されているのだが、似たような手法が『葬儀を終えて』(アガサ・クリスティー)で使用されている。(霧舎さんは意図的だけど、クリスティは意図したかどうか怪しい)

このシリーズは名前の通り、《あかずの扉》研究会のメンバーが、毎回不可解な殺人事件に巻き込まれるのだが、主要メンバー6人は必ず生きている、というのはいかがなものかと。いわゆる、探偵と助手だけが殺人事件の巻き込まれるのなら、ともかくとしても、メンバー6人が毎度危険な目に遭うものの、最終的には助かってしまうのである。

もうひとつ気になるのが、毎回なんらかの形で、メンバーの女の子のパンチラ(というのか)の描写があるのである。(そりゃまあ、いやらしくは書いてないけど、霧舎さんを推薦した島田荘司さんや、二階堂黎人さんは、パンチラの場面をどう思ったのだろう)

そのような若者向けの要素に目をつぶれば、本シリーズは、高水準の本格推理小説である。

「霧舎巧──略して《きりたく》」

リング(鈴木光司)

2002年12月13日
「この映像を見た者は、一週間後のこの時間に死ぬ運命にある」

同時刻に原因不明の死を遂げた、4人の若者が見たとされるビデオテープ。その謎を追う、雑誌記者浅川と大学の非常勤講師高山のふたりは、死の運命から逃れる方法を探す出そうとする。

テレビドラマ化、映画化、連続ドラマ化され、分類的にはホラーであるが、原作は浅川と高山の友情物語とも取れる。浅川にとって高山は、嫌うべき対象であり、高山も意図的に悪党を演じている。本来はもっとも純真で、自分が死ぬ直前まで友を思い続けているような人物であるのに。高山の想いは、確かに浅川に届くのだが……。

映像版では、貞子がテレビから抜け出してくる場面があり、そこで恐怖をあおっているが、原作にその場面はない。(日本ではデジタル放送が始まったばかりだが、アメリカではデジタル放送が主流である。即ち、日本ではアナログだった貞子の念は、海を越えてデジタルになったのである。すごいな)
SF小説短編集。16編収録。

ほぼ前編を通して描かれているのは、宇宙船(ロケット)や宇宙のことである。アメリカでの初版が1962年と記されているが、その当時にこれらの物語を描いたことには脱帽である。

けれど藤子・F・不二雄の創る幻想の世界に、子供のころから親しんでいる世代にとっては、新鮮さが多少薄れる。とはいえ、ブラッドべりの、宇宙に対する思いは、十分に伝わってくる。

原題『R is for Rocket』の訳は、『RはロケットのR』の方がしっくりくると思うのだが。どうだろうか。
官能小説のベストセラー『女薫の旅』シリーズの第1作。中学3年生の主人公の女体遍歴が綴られていく。(なんて説明を大学生がするのはなあ)

中心はやはり性的描写なのだが、それほどきつい表現もないので、女性が読んでも抵抗はないのではないだろうか。主人公が成長していく過程は、青春小説の赴きもある。

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